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映画「美女と野獣」感想

昔、イケメンの王子が、調子こいて税金上げて、パーティー開いてブイブイ言わせてました。王子のゴーマンっぷりはひどくて、雨宿りにきた哀れな老婆をあざ笑い、追い返すほどの勢いです。
ですがその老婆というのは、様子見に来た魔女だったわけです。当然、魔女はめちゃくちゃ怒り、ゴーマン王子に呪いをかけます

 

1、王子はイケメンじゃなくて、悪魔じみたルックスのビーストになるよ
2、使用人たちは日用品になるよ
3、城とその周囲は冬になるよ
4、領民から王子の記憶は失われるよ
5、一本の薔薇が枯れたら、おまえらの呪いは永遠に解けないよ
6、以上は王子が誰かから愛されたらキャンセルされるよ。これ男女の愛な!

 

と、なかなかにキツい呪いですが、理にかなっているのです。

 

1について。王子は顔はイケメンだけど、オトンが厳しかったせいで性格がコミュ障です。ルックスの美が失われると非常に不利です。地位とか財産とかはありますが、領民がいない今は使いどころが有りません。強いて言うなら、オカンゆずりの身内びいきな親切さはあるようです。そこを見出し、育てなおしてくれる女の子が必要なのです。

 

2について。使用人たちは、王子に忠実な働き者だったのですが、忠実ゆえに彼を放置して甘やかし、耳に痛い進言をいっさいしてきませんでした。それゆえに日用品にされたのです。必要なのは、王子の意思を無視してでも彼のためにふるまうこと。彼らは反省してますが、でも、肝心の女の子が来なきゃ挽回のチャンスもありません。最初から、女の子いらっしゃい! 女の子ウェルカム大歓迎の状態です。

 

3について。美しい城は冬に閉ざされ、周辺に狼が出没する危険地帯です。薔薇の花びらが落ちるたびに、城のどこかが崩落していきます。こんな城に意味があるのかっつー話です。暗いところに閉じこもった状況を打破せねばならんのは、心も城も同じだってことです。

 

4について。領民は支配者を失ったせいか、同じルーチンを繰り返す愚民と化しています。変化を求めず、女に学問は不要と考え、安易な扇動にすぐに騙されます。ガストンとかいう中味カラッポのイケメンが居るのですが、この悪役の語る陳腐な英雄譚に振り回されています。つまり、アホはアホに騙されるのです。彼らはカシコを馬鹿にした報いとして、王やヒロインといったカシコをみずから失い、永遠の愚民と化す瀬戸際です。

 

5について。美の象徴から、一枚一枚、そのかけらが剥がれ落ちていくわけです。いったい薔薇を生かすってのはどういうことなんでしょうな? 薔薇を大切にするってことは、単に薔薇を所有して、保持すればいいってことなんでしょうかな? と、暗喩的です。

 

6について。愛にもいろいろ有りますが、恋愛を持ってきたところがミソですね。他人と他人が、つまり違うものと違うものが、互いの中に美点を認め合わなければ、恋愛は成立しません。ルックスや財力も、美点のひとつではあるのだけど、そればかりに頼って振り回せば、ただの迷惑な欠点と化します。かつての王子や、現在のガストンがやらかしてることです。

 

と、この前提条件で物語はスタートを切ります。
あとはレースを見るような感覚ですな。いかにして城は女の子をゲットし、いかにして使用人は女の子を推し、いかにして王子は女の子の歓心を得るか。障害としてガストンがあらわれ、愚民があらわれるけど、それをどうやってかわすか。
よしバトンがつながった! よし条件クリア! と、ピタゴラスイッチを見るような面白さでした。あらかじめ明らかになっている関門とゴールを、どんどんと走り抜けてくれる展開です。
 
で、これは視点を俯瞰に持ってきた感想です。
ヒロインに寄りますと、これは女の子の成功譚となります。退屈な日常から脱出したい女の子がいる。まわりは本も読めないバカばかり。だけど彼女は日常と戦い、鬱陶しい悪役をかわし、父を助け、ついに野獣という、文学論をまともに語り合える友を得るのです。悪役の悪意が野獣に向けられると、またそれを止めるべく駆け付ける。最終的には、「必殺技:敬意を愛にパワーアップさせる波」で彼を救う。つまりヒロインが得るのは恋人というよりも、永遠の相棒、パートナーなわけです。
野獣に寄りますと、実はシンデレラストーリーになる。不幸な子が居た。その子には、醜くなるという試練が与えられた。野獣を救うのは王子様ならぬヒロイン様の愛だけ。野獣は耐え続け、待ち続け、ついにヒロイン王子を得る。美しい彼女の愛で彼は救われ、結婚して王になる。
 
たぶん中心となるのは、野獣のシンデレラストーリーという王道プロットで、王道でありながら逆転している。でも王道だから安定感がすごい。そこにキャラを足すたびに、整合性をきっちりと取っていったんだろうな、という気がします。
これ一人じゃ作れないカタチだよなあと。脚本の時点で、何人の視点が入ってるんだろう。
 
あえて深読みしてみましたが、素直に歌と踊りと美術の美しさに酔うのが良いと思います。面白かったです。