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「花丸」第十二話 感想と総評

花丸

最終話。新撰組の戦闘に巻き込まれた大和守が、沖田くんを守りたいという感情のままに、歴史に手を出しかけます。
が、当の沖田くん本人に、それを否定されるのでした。

 

この展開にするんだったら、もっと大和守の成長物語として成立させても良かったんじゃないかなあ。やはり唐突感はいなめない。この結論を示すために、その他の11話が本当に必要だった感じがしないのです。

 

たとえば、素人がおこがましいことを言うようですが……
大和守の危機を察した三日月らのセリフは、「あいつらなら大丈夫だ」じゃなくて、「大丈夫だろうかあいつらは」あるいは「あいつらなら大丈夫だと信じるしかない」にするべきだったのでは。
この最終話に限っては、ふんわりほのぼの路線を捨ててるわけでしょう。だったら、私を安心させないで欲しかったです。不安な予感にドキドキさせてほしかった。こういうのは、見ていて不安にならないと、解決時の安堵の快感も無いわけですよ。
戦闘シーンは格好良かったですが、こんなふうにキャラらしい戦闘を、全員のぶん見たかったなあ、なんて視聴者も多かったのでは。
つまり、彼らが大和守を大いに信じることになるエピソードが無かったし、新撰組刀の戦闘能力が特に信頼できるものだとするようなエピソードも無かったので、大和守ふくむ新撰組たちへのフォーカスが急速すぎるように感じてしまったのです。

 

後味は良かったですけどね。予定されたラストに綺麗に着地した感じはしました。

 

総じて、点数をつけるなら49点。とても50点は出せないが、ボロクソな点数はつけたくない、というかんじです。
やはり、設定の薄い50人近くのキャラクターを、平等に面白く描写するってのは難しかったのでしょうか。

 

話は反れますが、私がパッと思いつく方法は、巨大ロボットアニメです。
巨大ロボットアニメって、キャラ数がとても多いです。それでもキャラたちの描写を濃密に感じられるのはなぜかというと、

 

A、主人公が確立しているので、視聴者もそいつの目を通して他キャラを見れる
B、たいがい主人公は軍組織に居るので、全キャラに分かりやすい地位や職能がある

 

からだと思います。
Aは言うまでもない。ガンダムの世界はアムロの目から見た世界だし、エヴァンゲリオンの世界はシンジの目から見た世界です。グレンラガンはシモン。わかりやすいんですよ、ロボットアニメは。
またBについても、主人公以外で、少佐中佐大佐クラスの人間が「フッ」とか言うだけでそいつのキャラが立つし、わき役の整備士の「間に合うかなあ」みたいなセリフだけでも、そいつが濃密に描写されてる感じが出るんです。有名なセリフがあるでしょう。「偉い人にはそれがわからんのですよ」それだけで、その後、出番も無いそいつのキャラがわかる。上下関係に苦労してるんだなあ可哀想にと愛着がわく。それはそいつに「戦争中の未来世界でロボット兵器の整備をしているやつ」というハッキリとした職能設定があるからです。

 

さて、花丸の主人公は大和守安定でした。私はこれを高く評価していました。
最初アニメ化の話を聞いた時は、17歳くらいのオリジナル少女キャラが新人審神者になるパターンかと思っていたのです。
大和守安定がその役をやると知り、おお、設定転換か! 面白い! と思いました。
しかし結果は、あまり意味がありませんでした。大和守の目を通して見る刀剣男士、という最大のうまみを捨てていたからです。

あの大和守から見た世界って、もっと他キャラの一途さが強調された世界になるような気がするんですが。だって、花丸大和守はおのれの一途さを持て余しているキャラなんですから。どのキャラにも、そのキャラである理由があり、独自の一途さがあるのに、みな単なるふんわりおバカさんとして描写されてしまいました。これが残念でした。山姥切とか勿体ないなあ。
実際に描写されたのは、監督が思うところの、視聴者の視点から見た刀剣男士、といったところでしょうか。しかし読みを外している気がします。あれは、監督が思うところの、視聴者が好みそうなカワイイキャラだと思います。
そして地位や職能についても、利用しきれていなかった気がします。特に長谷部がひどかった。キャラの美点が見えないんですよ。主に対しての忠実さの描写を見ても、美しいなあとか、かわいいなあとか、格好いいなあとか思えないんです。
だって、花丸の彼はなぜあのようにして、主人へのアクティブな忠誠心を示す人物なのか、という理由が見えないんですもん。ゲームでは見えるのに。彼のあの世界での地位は、信長の元お気に入りではなく、職能は茶坊主を切れる程度の切れ味でもなかった。だからもう、同じ名前のオリキャラにしか見えませんでした。
そして似たようなことを、ネタに走った江雪左文字や、日本号に対しても思ったりしました。

 

大筋で辛い評価ですが、しかし、なにも壊さないように、なにも傷つけないように作ってあるのはわかりました。誠実さはあると思いました。少なくとも、漫画作品の実写映画化によくあるような、原作レイプではまったくないと思います。
しかし、描写の方向性を確立できなかったせいで、半端な完成度になってしまった、という印象です。